ふと思ったのだが、
もし人の「お尻を拭ける回数」というものが有限であったなら、我々はその生活において、かなり大きなスタイルチェンジを余儀なくされるのでないだろうか?
と、ご察しの通り、家の便器にまたがりながらそう思想するキクチなのです。どうも。
あ、そうそう。
今、「便器にまたがる」で思い出したんだけど、
以前、新築のマンションへ引っ越したばかりの
文月くんの所へ遊びに行った時に、トイレを借りようとしたら、
「は? しょんべん? 立ってすんなよ。またがれよ、ちゃんと便器にまたがってしろよ、この歯抜け。立ってしたらしずくで便器が汚れんだろ? またがれよ。出来んだろ? お前みたいな性的異常者にだって、それくらいは出来んだろ?」
みたいなことを言われて、
「新築マンション」というものの力によって、一人の人間が「野蛮」と形容するほかない保守的さに変貌する様をまざまざと見せつけられたものだ
が、とはいえ、実際に言われたとおりにやってみると、これがすこぶる具合がよろしい。
何が良いって、ズボンとパンツを下ろして便器にまたがってしまえば、あとはもうなずがまま、と言うか、手で支える必要もなく、便器の中心に狙いを定めるというようなストレスからも解放されて、
川に稚魚を放つように、森に小鳥を返すように、
「行け。あとは知らん」
といったリラックス状態でなせるのが、思いがけず快感なのだ。
さすが四年制大学に五年間通った男は違う。智恵を持っていらっしゃる。
よってそれ以来、キクチは家ではほとんどまたがって小をするようになっている。
なのでさっき、「便器にまたがりながら」と書いたのだが、それは必ずしも「大 goes on」な状態を表すとは限らないのである。
というか、そんな話はどうもでいいのである。
尻の話なのである。
キクチが「尻拭きの有限」に思いをはせた背景には、
実際、最近、
尻を拭くと、すこぶる痛いということがある。
決して安いトイレットペーパーを使っているわけでもないのに、親の仇みたいに力一杯拭いているわけでもないのに、どうも痛んでしょうがないのだ。
一応、知らず知らずのうちに、トイレットペーパーとサンドペーパーを間違って購入してしまって、間違ってそれをトイレットペーパーホルダーにセッティングしてしまっていないか確認もしてみたが、
大丈夫だ、そこまで気は違ってない、ちゃんとトイレットペーパーだ。
だとしたら、これはもう、尻の方に変化が起きたとしか考えられない。
それまで尻の部分を薄く覆っていた柔らかい皮膜のようなものが、長年拭き続けた結果、痛点というか、ヒットポイントが表出してしまったのではないだろうか? と。
じゃあ、薄く覆われていた状態で、今までどうやって外に出してたんだよ、という冷えた指摘はここでは無視する。
だって、痛いんだもん。
じゃあ、あなた、あなたがもし、
「え~と、あなたが安心して尻を拭ける回数はあと、250回ね。それを過ぎたら、熱湯をくぐらせたタワシで拭いたみたいな激痛に変わるから」
と言われたらどうしますか?
「どうしますか?」と言われても困るだろうが、それ以上にキクチは痛むのである。
拭くたびに、拭くごとに、痛むのである。
そこんところを、是が非でも理解し、そして同情してほしいのである。
思うんですよね。
こういうことが自分の体に起こるたびに、
「あ~やっぱ体って使い捨てなのね」と。
使い続けた自転車のタイヤが磨り減るように、体も下り坂をゆっくりゆっくりと下り続け、だんだんと使いものにならなくなるんだなあって。
キクチの尻にしたって同じことで、昔は至極当然のように「拭いていた」ものが、徐々に「拭きづらく」なり、やがて「拭きにくく」なり、いよいよ「んん? 拭けるか。これ? おい、拭けるか?」となって、最後には「タワシ」となるのだ。
人によってそれは「走る」という行為であったり、「夜更かしをする」であったり、「セックス」だったりするのだろうが、キクチは「尻拭き」において、自分の体の「タワシ」感に気がついたのだった。
何でそんな暗いことばかり考えるのかというと、
この間、職場の健康診断を受けてその結果が返って来たのですが、とある項目に
E判定なるものがあったんです。
判定にはAからFまであるのですが、もちろんAは良好。じゃあEはってえと、「内科で治療を勧める」的なことが書かれてました。
かなり落ち込んだ。人にものを勧められて、ここまで落ち込んだことはかつてない。
ちなみに、もしそれがE判定のすぐ後ろ、F判定だったら、その評価内容は、
「そのまま治療を継続せよ」
になるらしい。
いやいやいや、受けてないし、治療。
なのに、「治療開始」を飛び越して「治療中」まであと一歩でどういうこと?
白衣姿の幻のドクターに、「その調子でがんばっ」と肩を叩かれた気持ちがした。
だから、まだ治療も何もしてないっつーのに。
そこそこ酒も飲んでるし、今さら「健康」と呼ばれたいとは言わないけれど、
でも、坂の上の雲のかなたに、
「中年」という、これまでSF気分で他人事のように眺めていた異空間のちらつきを感じて、
ただもう、ひたすらに恐ろしく思うキクチなのでした。
で、こんなタイミングでなんですが、
そんなキクチが来月、朗読をいたします。
☆
jujumo「森、つなぐ、風」リリースツアー
【日時】
2009年11月03日 (火・祝)
Open 18:00
Start 19:00
【料金】
charge¥1500(+1D¥500別)
【場所】
大阪・北浜「雲州堂」
530-0046 大阪市北区菅原町7-11
TEL&FAX 06-6361-3903
【出演】
jujumo
さチエルーム
文月ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト+菊地清達
【出店】
雲州堂(食器)虹色屋(織物)苺屋(アンティークアクセサリー&布)
jujumoニューアルバムを引っ提げての関西ツアー。
大阪編としてのその1回目はここ雲州堂。
この日は、文化の日ということで、ちょっと文化祭的指向で開催です。
雲州堂の食器バザーや、
手作り人形を交えたほのぼの劇場とあったかいアコーディオンのユニットの『さチエルーム』、
混沌の世界の住人のごとく、物語りを進めて行く朗読と音楽とのユニット『文月ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト+菊地清達』によるライブもあります。
お楽しみに。
☆
やんちゃな小学生に、5センチくらいの至近距離でエアガンぶっ放された鳩のように、
ガタのきた体を震わせながら、心して詠もう思います。
お時間ございましたら、是非、遊びに来てください。
クルックー。